健診[ケンシン]と検診[ケンシン]。どちらも健康を評価するものですが、同じ読み方でとてもまぎらわしいですね。
健診(健康診断)(Health check up)は健康かどうか全体的に調べるものです。例えば一般的な成人健診(Adult health check up, "physical")、妊婦健診(Prenatal visit)、小児科検診(Well child visit)などがあります。
検診(Disease screening)は特定の病気の発見を目的としたものです。例えば、乳がん検診(Breast cancer screening)や大腸がん健診(Colon cancer screening)などがあります。
日本であれば学校や市町村ごとに健康診断を行うことが多いですが、アメリカでは、個人でかかりつけ医(PCP)を受診して健康診断(Health check up, "physical")を行います。アメリカの多くの保険が一年に一回の健康診断を保険でカバーしています。
アメリカの健康診断では、日本の検査偏重の健診(日本の健診では血液検査やレントゲンなどを多用する傾向があります。)とは異なり、問診・カウンセリングと診察に時間をかける傾向にあります。また年齢や持病によって必要な予防接種(肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチン、三種混合ワクチンなど)を受けます。
もちろん年齢や性別に応じて必要とされるがん検診(大腸がん検診、乳がん検診など)やその他の病気(コレステロール、骨粗鬆症など)の検診も定期検診に含まれます。その他、喫煙、飲酒、事故予防、生活習慣についてのカウンセリングも必要に応じて行われます。
Hope Family Health Centerでは、アメリカの健康保険でカバーされる範囲で健診を行っています。上記の内容の他、検査については、以下の「がん検診・その他の病気の検診」をご参考にしてください。乳がん検診のマンモグラフィや大腸がん検診の大腸内視鏡などは、近隣の医療機関と協力して行います。
アメリカでは科学的なデータに基づいて、国や大きな学会が勧告を定め、本当に有効な検診(死亡率を下げるというデータがある検査)を行います。
以下にアメリカで推奨されているがんや重要な病気の検診のリストを載せました。
がん検診 |
検診内容 |
対象年齢 | 頻度 |
子宮頚がん検診(Pap smear) |
細胞診 |
21歳以上65歳まで | 3年毎 |
大腸がん検診(Colorectal cancer screening) |
便潜血、大腸内視鏡 |
50歳以上75歳まで | 検査内容による |
乳がん検診(Breast cancer screening) |
マンモグラフィ |
50歳以上75歳まで(40歳~50歳未満は医師と相談) | 2年毎 |
肺がん検診(Lung cancer screening) |
低線量胸部CT |
55-80歳のうち30 pack-yearsの喫煙経験者または15年以内に禁煙した人 |
毎年 |
*日本では、胃がん検診が、40歳以上の男女を対象に行われており、毎年の胃レントゲン検査(バリウム検査)が推奨されています。
「科学的根拠に基づくがん検診 推進のページ」参考
http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/igan.html
その他の検診 | 対象年齢 | 頻度 |
骨粗鬆症検診(Osteoporosis screening) | 65歳以上の女性 | 医師と相談 |
腹部大動脈瘤検診(Abdominal aortic aneurysm screening) | 65歳~75歳の喫煙歴のある男性 | 一度 |
血圧測定(Blood pressure screening) | 18歳以上の男女 | 1-2年毎 |
コレステロール(Cholesterol screening) |
35歳以上の男性、45歳以上の女性 |
5年毎 |
糖尿病(Diabetes screening) | 血圧135/85以上の男女 | 3年毎 |
うつ病(Depression screening) | 15歳~65歳の男女、妊婦 | |
HIV感染(HIV screening) | 15歳~65歳の男女、妊婦 | |
クラミジア感染 | 妊婦、25歳未満の性活動のある女性 |
検診は病気を早く発見し、早期治療をすることが目的です。その結果、寿命が延びたり、より健康に生活できることもありますが、これは全ての健診に当てはまるわけではありません。どの医療行為にも利益と害があるように、検診にもその利益と害があります。
★検診の利益は
①病気が早い段階で見つかることにより、早く治療を開始でき、寿命が延びたり、より健康に生活できる可能性がある。
②病気の治療のかかる経済的負担や時間的労力が減る。
③検査が正常であった場合に安心できる。
★検診の害は
①検査の伴う合併症(例えば、大腸内視鏡による出血や大腸に穴が開いたりすること、レントゲン検査による被ばく)
②検査の伴う時間と費用(例えば、検査のために、仕事や学校を休み、高い費用を払うこと)
③疑陽性【本当は病気ないのに、病気があると検査で診断されること】による心理的負担(例えば、肺のレントゲンで異常と言われて、「肺がんではないか」と不安になること)
④過剰診断により、過剰な検査や治療を招く可能性がある。検診によって「がん疑い」と診断されると、それに伴う精密検査が増加します。
以上のことから、検診は
有効性のある検診を
推奨される年齢と検診間隔で
定期的にうけることが大切です。
検診に関して、ご質問がありましたら、皆さんの健康をよく知っているかかりつけ医にご相談ください。